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性格とは何か より良く生きるための心理学 著者:小塩 真司

ビックファイブ

外向性(Extraversion)

活発さや明るさ、ポジティブな感情の強さ、ひとりよりも皆と一緒にいたい気持ちを反映する。
活発であると同時に、強い刺激を求めることも意味し、決してコミュニケーション能力 (コミュ力)のことを指すわけではない。
外向的な人物でも、 コミュニケーションがうまい人物とうまくない人物の両方がいる。
よく「外交性」と間違えて記述されることがあるが、逆が「内向性」であることからも正しくは「外向性」だとわかるだろう。

外向性は、活発で積極的、エネルギッシュで社交的、他者と交わることを好む傾向を意味する。
外部の刺激を得ることを好む傾向があることから、一人でいるよりも多くの人と楽しく時を過ごすことを好む。
外向性が低いことは内向性と表現でき、一人でいることや静かで落ち着いた環境を好む傾向がある。

神経症傾向(Neuroticism)

特にネガティブな感情の揺れ動きの大きさを反映する。
落ち込みや不安、怒りといったあまり望ましくない感情を抱きやすい傾向を表す。
神経症傾向の高さはストレスにうまく対処できなかったり、さまざまな精神疾患にも関連したりする傾向がある。
神経症傾向の低さは情緒安定性とも呼ばれ、感情の揺れ動きが少なくおだやかな状態になりやすいことを意味する。

神経症傾向は、ストレスを感じやすく不安や悲しみ、落ちこみ、怒りなどのネガティブな感情を抱きやすい特徴をもつ。
この特徴は、日常生活の中で苦痛を抱きやすい傾向に結びつくのですが、一方でこれは、些細な兆候から危機を早期に察知しやすいことも意味します。
神経症傾向は情緒不安定性とも呼ばれ、神経症傾向が低いことは情緒安定性とも呼ばれます。
情緒安定性は、感情の揺れ動きが少なく安定し、落ち着いている傾向を表します。

開放性(Openness)

関心の広さや興味の強さ、空想をめぐらす傾向を反映する。
「経験への開放性」とも呼ばれるように、開放性は対人関係上オーブンなことを意味するのではなく、さまざまな活動や現象を受け入れる傾向という意味である。

開放性(経験への開放性)は、経験したことがない新しい経験や考え方に対して開かれており、 柔軟な態度を示し、好奇心が旺盛な傾向を表します。
開放性が高い人は、美術館や博物館、図書館に行くことを好み、芸術や学問にも関心を示す傾向があります。
一方で開放性が低い人は、現実を重視し、伝統や慣習を尊重し、変化の少ない安定した環境を好む傾向があります。

協調性(Agreeableness)

やさしさや人を許す寛大さ、思いやりや面倒見の良さを反映する。
調和性とも呼ばれる。
協調性の低さは、攻撃性やあざけり、他の人をだますことや自分の利益を優先する傾向を意味する。

調和性(協調性)は、他者に優しく配慮や思いやりを示し、協力的で友好的な傾向を表します。
対立を避けて円滑な人間関係を築こうとしますが、競争すべき場面でも一歩引いてしまう可能性もあります。
一方で調和性(協調性)が低い人は、自分の意見や考えを優先する傾向があり、他者に勝とうとし、自己主張が強く、とげとげしい態度をとる傾向も見られます。

勤勉性(Conscientiousness)

まじめで計画的、熱心に活動に取り組む傾向を反映する。
誠実性とも呼ばれる。
動勉性の低さは、いいかげんさやいきあたりばったりであることを表すが、言い換えると臨機応変であることも意味する。

誠実性(勤勉性)は、計画的で目標を達成しようとし、責任感があり、自分を律して行動する傾向を示します。
几帳面でねばり強く物事に取り組む傾向がありますが、完全主義的な状態に陥ってしまう可能性もあります。
一方で誠実性(勤勉性)が低い人は、衝動的で計画性に欠け、自然体で物事に取り組む傾向があります。

パーソナリティとは

個人の考え方、感情、行動のパターンの全体を指し、日本語では「人格」や「性格」「個性」と訳される。

生まれ持った気質に加えて、育った環境や対人関係などの経験を通じて形成される、その人固有の「人となり」を意味する。

レーダーチャート

↓のレーダーチャートは私が20歳の時と48歳の比較である。

パーソナリティは言い悪いは別として、時間の経過とともに変わって当然である。

逆を言えば変わっていない方がおかしい。

変わっていないということは、気付きが無いか浅いのだろう。

変化する年代、安定する年代

さらにこのロバーツらの研究では、性格特性をそれぞれの年齢段階でまとめることで、全体的な変化の大きさを推定している。その分析結果によると、性格全体では10代から30代くらいまで平均値の変化量は比較的大きく、40代以降になると小さくなっていく様子がわかる。 特に40代と70代以降の変化は小さく、50代と60代はそれらに比べるとやや大きい。

このような変化は、人生で多くの人が経験する出来事に関連しているように見える。10代から30代は学校から学校への移動もあり、学校から社会への移行、結婚や出産など環境が大きく変化しやすい。40代は家庭も仕事も比較的安定している時期であり、それが50代になると子育てが一段落し、親との死別など多くの人々の間で家庭環境の変化が起きるようになってくる。そして60代になると、退職や子どもたちの独立といったように、ふたたび大きな人生の岐路に立つ場面が増えてくる。

性格特性の変化量を年齢段階別に見ていくと、このような大きな環境の変化に対応しているように見えるのである。もちろん、時代が変わればそれぞれのライフイベントが何歳頃に生じるかは変わってくるだろう。とはいえ性格という個人の特徴を見ているにもかかわらず、 人々の一生涯の道筋をたどっていくかのように見える点が興味深い。

ステレオタイプ

ある集団に属する人々の特徴についての独自のイメージのことを、ステレオタイプという。 

 たとえば「女性は理系の科目が苦手だ」「東大生はエリート意識が強い」 「早稲田の学生はバンカラで、慶應の学生は育ちが良い」「関西人はおしゃ べり」「黒人はスポーツが得意」 これらのように全員を代表するかのこれらのように、あるグループに属する人々の特徴を、全員を代表するかのように表現することがステレオタイプの例である。

このようなステレオタイプを抱いてしまう理由のひとつは、それが複雑な現象から平均的な傾向を導き出そうとする、私たちがもつ認知的な特徴そのものだからである。私たちは複雑な世の出来事を、ひとつひとつ細かく吟味しながら物事を判断しているわけではない。できるだけすばやく、楽に、負荷がかからないように、そしてある程度は正しく判断しようと試みるものである。そして、このようなすばやい判断を行う能力があったからこそ、私たち人類は自然界でうまく生き残ってきたのだと考えることもできる。

また、ステレオタイプはいつも必ず間違った判断になる、というわけでもない。情報の一部からすばやく全体を判断することは、多くの場合にはおおよそ正しく、だからこそ私たちはそのような判断を日常的に繰り返している。しかし時に、ステレオタイプを過信してすべてに当てはめようとしたり、間違っているにもかかわらずそれを訂正しなかったりして、他者に苦痛を与えるような判断を下してしまうことがある。

偏見と差別に陥らないこと

ステレオタイプの中でも、特定の集団に属する人々に対して好意的ではないイメージを当てはめて判断することを偏見と呼び、偏見に基づいて実際に判断を行ったり行動したりすることを差別という。

今私たちが生きている世界では、聞こえてきた動物の鳴き声が自分の命を狙うものであるかどうかを判断する必要も、目の前の人間が自分の命を狙う敵であるか味方であるかをすばやく判断する必要もない。むしろ、その必要もないのに相手を敵とみなしたり、排除の対象としたり、本当はそうではないのに「この集団に属する人だからこういう特徴があるはずだ」と無用な特徴を当てはめたりするといった弊害のほうが目立つようになっている。2020年の新型コロナウイルスによる感染症拡大の中でも、そうした弊害はいくらでも見ることができる。

似ている性格の人と付き合う

男女についてもっと身近な問題を考えてみよう。それは性格が似ている相手と付き合うのか、似ていない相手と付き合うのか、という問題である。

「似たもの夫婦」という言い方があるように、カップルは似ているような気もするし、「同属嫌悪」という言葉があるように、似たものに対してはむしろ反発する気持ちが芽生えてくるような気もする。研究の中では、互いに似ていることを類似性、そして互いに異なっていて補い合うような関係のことを相補性という。いったい、どちらがカップルに良い効果をもたらすのだろうか。 

たとえば、夫婦の性格の類似性を検討した研究がある。この研究では、248組の夫婦に対して性格や価値観と、関係の満足度の調査が行われている。そして結果を見ると、価値観や性格のプロフィールが夫婦で似ているカップルほど、関係の満足度は高くなる傾向が示された。 

また、恋愛中のカップルの目標の類似性を検討した研究もある。125組のカップルに調査を行ったところ、女性においては目標のパターンが類似しているほど、相手との関係に満足しやすいという結果が報告されている。また、スリルのある活動に参加する、良い活動をする、 宗教上の教義を守る、友人を大切にするといった項目について、カップルはカップルではない組み合わせより互いに似ていることも示されている。

さらに、多くの研究をまとめてメタ分析を行った研究もある。まず、神経症傾向が低く協調性と勤勉性の高い人は、カップルの相手に満足しやすい傾向が見られた。そして、カップルの類似性と満足度との関連を見ると、39のうち31の研究では満足度を高める効果がないという報告がなされている一方で、6つは類似しているほど関係が満足する、2つは類似しないほど満足するという報告となっており、一貫しないという結果であった。

この点については、結婚期間の長さが関連しているかもしれない。749組の日本人の結婚したカップルを対象とした研究では、結婚してからの期間がより短いカップルでは互いの性格の類似性が関係満足度を高める一方で、期間が長くなるとその効果が見られなくなることが報告されている。いずれにしても、どちらかといえば性格が似たカップルのほうが、満足しやすい傾向があることは確かなようである。

離婚と性格

ドイツ、イギリス、ベルギーの3ヵ国で実施された調査について、離婚経験と性格の観点から分析した研究がある。その研究結果によると、ビッグ・ファイブのうちどの国でも共通して離婚に影響を及ぼしていたのは、開放性の高さであった。そのほか、神経症傾向や外向性は離婚確率を高め、勤勉性や協調性の高さは離婚確率を低める方向に影響していた。ただし、外向性と神経症傾向については、性別や年齢、教育段階などさまざまな要因を考慮するとその影響力が小さくなる傾向が見られた。その一方で、勤勉性と開放性については、 要因を考慮しても影響が残る傾向にあった。

なお、国によって性格と離婚経験との関連は異なっており、その度合いも大きなものだとは言えない。しかしながら全体的に、開放性の高さと勤勉性の低さが離婚の特顔だと研究者たちは述べている。開放性の高さは前例や慣習にとらわれない傾向を表し、勤勉性の低さも社会的な規範に縛られない傾向を表す。これまでの生活の延長線上を今後も進んでいくことにこだわらず、離婚することに抵抗感が少ない、どちらかというとルールに縛られず自由な考え方をする先に離婚があることを、この研究は表しているのかもしれない

浮気をする性格

離婚に至る大きな要因のひとつである、浮気についてはどうだろうか。

アメリカで107組の夫婦214人を対象にした調査がある。夫婦それぞれに対して調査が行われており、本人の性格特性と、それぞれ結婚相手が「浮気をしている可能性」について回答している。浮気をしているかどうかを自分で回答すると、正直に答える可能性は高くないと考えられるが、パートナーが回答すれば(もちろんそれも推測に過ぎないが)疑わしい様子を示していれば回答に表れてくると期待される。

まず、勤勉性が低いと浮気の可能性が高まることが明らかにされた。離婚と同じように浮気も、秩序やルールを重視して自分を律する傾向を表す勤勉性が低いことに関連するようである。またそれに加えて、夫婦の関係も浮気の傾向に結びつくという。たとえば、不仲であれば浮気の可能性が高まる。一方、自分ではなくパートナーの協調性と勤勉性の高さが自分の結婚生活の満足度を高め、その満足度が自分の浮気の可能性を低くしていくという関係も示された。言い換えれば、自分の協調性と勤勉性の高さは夫婦生活の満足度を高めることで、 相手の浮気の可能性を低くしていくということでもある。やさしく誠実な態度が、パートナー の不貞を防止するということだろうか。

また、結婚したばかりの夫婦を数年間追跡調査した研究もある。この研究結果では、夫婦の浮気をする傾向に対して、それぞれ異なる性格特性が影響する様子が示されている。たとえば夫の浮気の傾向に対しては、夫本人の性格特性より妻の神経症傾向とナルシシズム傾向の高さ、開放性の低さが影響していた。不安定で自分のことを中心に考え、保守的な傾向を示す妻は、夫の浮気の可能性を高めてしまうようである。そして妻の浮気傾向に対しては、 本人の外向性と夫の神経症傾向の高さが影響していた。他の人々と盛んに交流することに関連する外向性が浮気に影響するのは、妻の側に顕著だという結果であった。

どうやら、夫婦ともに相手の浮気の確率を高めてしまうのは、自分の情緒不安定さのようである。落ち込みやすかったり不安を抱えていたり、怒りを抱きやすいなど、ネガティブな情動が表に出ることは、相手にも良くない影響を及ぼすということなのだろうか。

しかしそれにしても結果を見ると、夫は自分が浮気をするかどうかを「妻次第」にしてしまっているように思えてくる。夫の浮気傾向に対しては「妻の性格」ばかりが影響していて、 本人の性格はあまり関係がないというのは、少し考えさせられる結果ではないだろうか。

運命の人と出会う

相性占いの大きな目的のひとつは、「運命の人と出会うことができるのでは」という期待にあるのではないだろうか。自分にぴったりの相手と出会って、生涯を幸せに暮らしていきたい。そのような希望をもつ気持ちは、わからなくもない。

そして、「性格が似たもの同士がカップルになる」「性格が似たカップルは満足感が高く、関係が長続きしやすい」といった研究結果を知ると、やはり自分と似た性格をもつ相手が運命の人に違いないと考えたくなるものである。

しかし、性格は変わっていくものである。そして、恋愛関係でも結婚でも、人生において大きなイベントがあると、性格特性は変化していく。実際に、恋愛を経験したり結婚したりすると、神経症傾向が低下し、外向性が上昇するという結果が報告されている。ただし、その変化は大きなものとは言えないのだが。

そして、結婚して過ごす期間が長くなると互いに性格が似るのか、そもそも似た相手を選択するのかという点も大きな問題である。1000組以上の結婚したカップルの研究によると、性格特性の類似性は結婚後の期間とはほとんど関係がないという結果になっている。つまり、長い間一緒に暮らしているから性格が似てくるという証拠はないのである。それよりも、おそらく最初から似た相手を選択する傾向が少しだけあるのだろう。

「運命の人と出会う」という考え方は、関係が固定化されていることを意味する。パズルのピースがぴったりと合うように最初からすべてがうまくいき、そこに何の努力の必要もないかのように思わせる魅力がある。しかし実際には、性格が似ているからといって、ふたりの関係がすべてうまくいくということはない。ふたりの間の関係性は徐々に変わっていくものである。そして、その関係性は、互いに作り上げていくものである。

どのような関係性であっても、互いに歩み寄り、お互いを尊重し、相手のことを心配し、 問題解決の道を探し、将来について話し合うことが大切なことに変わりはない。決して、性格が似ていることですべてがうまくいくとは考えないほうがよいだろう。

「成功する性格」はあるのか

学校の成績を高める性格

現実の世界に目を向けてみよう。社会の中で「より良い結果」とは、何を指すのだろうか。生徒たちにとってそれは学校の成績であり、大学生にとっては成績評価値であるGPA(Grade Point Average)の高さが、「良い結果」であると言えるだろうか。

オーストラリアの心理学者アーサー・ボロバットは、性格と学業成績との関係をメタ分析で検討している。学業成績は全体的にビッグ・ファイブの中でも動勉性と強く関置しておその関連の強さは知能と学業成績との関連の強さと同じくらいだった。歴史的経緯をひもとくと、もともと知能検査は小学校に入学する前に、授業についていけない子どもたちを選んで特別な教育を施すためのスクリーニングを目的として開発された検査である。したがって、 知能検査の結果が学業成績を予測するのは当然だと言えるだろう。それに対して勤勉性の性格特性は、特に学業成績を予測するために考え出された概念ではない。であるにもかかわらず、知能と同じくらい学業成績に関連するというのは、とても興味深い現象だと言えるだろ

また、さらに詳しく検討すると、小学校から高等教育へと教育段階が進んでいくにつれて、 性格と学業成績との関連は次第に小さくなっていく様子が示された。子どもの頃は性格が比較的そのまま成績に反映するのに対して、高校、大学と進んでいくと学校や家庭の状況、友人関係などそれ以外の要素が増えていくため、関連が弱くなると考えられる。

そのような状況の中でも、全体的に安定して学業成績に関連していたのは、勤勉性の性格特性だった。規律を守って目標を設定し、その目標に向かって進んでいくような行動上の特徴が、成績に結びつくようである。

仕事でうまくいく性格

学校を出て仕事をしはじめると、職場で評価されることが社会の中で「より良い結果」に結びつくひとつの要因になる。仕事上での成功は社会的地位を上げ、収入を増やし、なんといっても充実感や満足感をもたらしてくれる、重要な活動のひとつである。では、このような結果にも、性格は関連するのだろうか。

就活生にとって就職活動の中でもっとも重視される項目は、コミュニケーション能力だとされる。就活の中で言われるコミュニケーション能力が、何を意味しているのかについてはよくわからない面があるものの、多くの人々のイメージをビッグ・ファイブの性格特性に当てはめると、外向性や協調性だと言えるのではないだろうか。

では、実際にはどうなのかを見てみよう。性格特性と職業上の成功との関連について、メタ分析で検討した研究がある。その研究結果によると、ビッグ・ファイブの性格特性の中でどのような職業にも共通して、職業上のパフォーマンスに安定して関連していたのは、勤勉性であった。訓練でうまく技能が向上していくこと、人事上の評価の高さにも、また仕事上の生産性にも、そして収入の多さにも、関連の程度は強くないものの、安定して関連していたのが勤勉性なのである。

外向性や協調性のような、いわゆるコミュ力に関連しそうな性格特性は、それほど職業上のパフォーマンスの高さを予測するわけではなさそうである。もちろん、チームとしてともに業務を遂行していく上で、互いに円滑なコミュニケーションをとることは必要不可欠な要素である。ところが研究結果を見るとそれよりも、目標を立て、その目標に向かって計画を立案し、実際に意欲をもって遂行していく、そのような行動につながる勤勉性が、おおよそどのような職業でもそれなりにうまくやっていくために必要な特性であるように見える。

長生きする性格

先に、百寿者の性格特性の特徴が開放性にあるという研究を紹介した。100歳を超えるまでにはいかないものの、より長生きにつながるような性格はあるのだろうか。 アメリカの心理学者ハワード・フリードマンらは、子どもの頃のある性格特性が後の寿命に影響を与えることを明らかにしたことで知られている。この研究で調査の対象になっているのは、1920年代に行われた調査に参加した平均1歳の子どもたちである。この子どもたちは1986年まで追跡調査が行われており、調査に参加していた約1200人のうち約6割がまだ生存していた。

このような長期的な調査を行うことによって、子どもの頃の性格特性が、長期にわたってどのような影響を及ぼしていくのかが明らかにされる。そして分析によって明らかにされたことは、男性でも女性も、子どもの頃の勤勉性が高い者のほうが低い者よりも、大人になってからの生存率が高いということであった。

さらに、ビッグ・ファイブよりも細かい性格特性について死亡リスクとの関係を検討した研究もある。その結果によると、神経症傾向の下位側面である傷つきやすさや、外向性の下位側面である活動性も低い死亡率に関連していた。そして勤勉性については、ほとんどの下位側面が低い死亡率に関連していたという。やはり、この性格特性は全体的に、少しだけではあるものの確実に死亡リスクを引き下げるような効果をもつようである。

勤勉性が高い人のほうが低い人よりも少しだけ長生きすることについては、勤勉性の高さがさまざまな「健康に良さそうな」行動に関連するという研究知見にその理由を求めることができそうである。勤勉性の高さは、過度な飲酒をしないこと、違法な薬物を使用しないこと、不健康な食生活を避けること、危険な運転行為をしないこと、危険な性交渉をしない傾向、そして喫煙率も低く、暴力行為も少ないことなどが明らかにされている。このような、 自分自身を抑制するような生活スタイルが日々の生活の中で積もっていくことによって、勤勉性の高い人は低い人に比べて少しだけ、長生きをすることにつながるようなのである。

勤勉性は無理をすることではない

ここまで見てくると、学校の成績も良く仕事もうまくいきそうで、収入も多く長生きもできそうな勤勉性を高めることが、人生にとってとても良いことのように思えてくる。

授業の中で「勤勉性が人生で良い結果をもたらす可能性がある」という話をすると、「動勉性の高い人は毎日の生活の中で我慢をして無理をしているのだから、むしろ早く死んでしまいそう」という感想をもつ学生もいる。 

しかし実際には、そうではない。勤勉性の高い人は、そのような自己を律するような行動を日々の生活の中で行うことが「心地よい」からそのようなことをしているのであって、決して無理をしているわけではない。今ここで泥酔してしまって明日の仕事に支障が生じるくらいなら早く家に帰ってゆっくりと休んで明日に備えたい、そのように考えるのが勤勉性の高い人々の特徴なのである。

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